『死者の書』いろいろ | 日々の雑記
『死者の書』いろいろ

『死者の書』いろいろ

長岡良子『ナイルのほとりの物語』の2巻にあるツタンカーメンの話のタイトルが「死者の書」で、はじまり方(死者が眠りから覚めていく)が、折口信夫の『死者の書』によく似ている。長岡さんは『葦の原幻想』の最後にも『死者の書』について ”世の中にはこーいう小説もあったのか、と私の目をみひらかせてくれた名著“ と書いている。

『死者の書』折口信夫・著 中公文庫 1974年 

死者が目覚めていく冒頭にものすごい衝撃をうけた。さらに音の表現がすごい。ぞっとする。

「した した した」水の垂れる音。
「こう こう こう」魂呼ばいの声。

また読んでいるうちにこれは時系列通りではないな、とわかってくる。藤原南家の郎女が失踪した方が早いのだ。話の流れを掴むまで苦労したけど、実は何が起きていたのか今だにはっきり理解できないけど、雰囲気だけで充分だと感じられた。

その後『初稿 死者の書』が2004年に刊行された。
それを読むと冒頭が違った。だいぶ各章の順番が入れ替わっていた。初稿の方が話としてはわかりやすい。けれど、やはりあの死者の目覚めの冒頭が与える衝撃に勝るものはないと思う。


DVD「死者の書」川本喜八郎監督 2007年

2006年に公開された人形アニメーション映画。人形でよかった!これが実写なら生々しすぎるところ、人形のおかげで超自然というかどこか浮世離れした不思議な世界が感じられる。堀辰雄が『死者の書』を評して「あれだけは古代を息吹している」と言ったそうだけど、まさにそれ。


漫画『死者の書』上下 折口信夫・原作 近藤ようこ・著 KADOKAWA 2015〜2016年

近藤ようこの漫画は現代ものしか知らなかったけど、これはとてもよかった。彼女の単純なすっきりした線で描かれる絵は、この世界にぴったりで、くどくなく、あっさりしすぎず、神秘的。彼女の絵で読めてよかった。そして白状すれば、この作品を読んで初めて「死者の書」が理解出来た気がする。

上巻あとがきに
ー目指しているのは、折口信夫を全く知らない人のための「死者の書・鑑賞の手引き」です。原作を読んで、私の解釈は間違っているというような指摘をされるのこそが本望ですー
とある。

いえいえ、とても優れた手引き書でした。ありがとうございました。

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