『リチャード三世』 シェイクスピア全集7
松岡和子/訳 ちくま文庫 1999年
読書会のテキストは角川文庫版だけれど、以前購入していたこちらも読んでみた。角川版だと朗読で聞きたいなと思うけど、それよりくだけた感じで、意味はこちらの方がわかりやすい。
前に『ヘンリー六世』を読んでいたので、これまでの流れがわかっていて人物も誰?と迷うこともなかった。
角川版と元にしたテキストが違うのでところどころ違っているが、それについては両方とも詳しく注で説明してある。
また「史実では違う」という注がいくつもあり、あらためてこれは歴史書ではなく創作なのだということがわかる。
リチャード三世の「極悪非道」なイメージは、この作品が書かれた当時既に流布していたそうだが、それを決定づけたのがこの作品らしい。ジョセフィン・ティ『時の娘』でもそういう記述があった。
巻末の解説で、ヘンリー六世の貧弱な王位継承権の正当性を補うため、ことさらリチャード三世を悪人に仕立て上げる必要があった、とある。ああ、なるほど。確かに『ヘンリー六世』を読み、系図を見てると、ヨーク派とランカスター派のそれぞれの後継者たちの血筋にはたいして差はないけど、ヘンリー六世だけは弱い。リチャード三世の父親はエドワード三世の3男と5男の血筋だし、さらに母親は4男の血筋だ。ヘンリー六世ははかろうじて母親だけが3男の血筋だ。王位簒奪者と呼ばれないとも限らない。プランタジネット朝からチューダー朝へと代替わりして、その正当性を広く世間に訴える必要があったのだろう。その犠牲になったのがリチャード三世。なんかかわいそう。
でも汚名は着せられても、その名は作品とともに後世まで残り、魅力的な悪党ぶりは世界中で上演され続けている。
シェイクスピアってやっぱりすごい。
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