E.G.スピア / 著 渡辺茂男 / 訳
岩波書店 1974年刊
これはまた難しいテーマだ。ローマに支配されていたユダヤ人たちが、いつかローマ兵を追い払い自分たちの故郷を取り戻そうとする思い。その思いの強さが、今も続く争いの根源であり、若い主人公がかたくなに、その思いを募らせるのも無理はない。そこへ現れたイエス。復讐ではなく愛を説くイエスに失望しながらもなぜか惹かれたのは、彼の心が安らぎを求めていたからか。主人公は愛に目覚めたが、この後のイエスの運命を知っている私たち読者は、やりきれない思いを抱く。
パレスチナが今もなお紛争の地であることに、問題の根深さを思い知る。
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