『バレエ・シューズ』ノエル・ストレトフィールド・著 中村妙子・訳 教文館 2018年
『バレエシューズ』ノエル・ストレトフィールド・著 朽木 祥・著 福音館 2019年
『ふたりのスケーター』が抄訳かもと思ったのは、同じ作者の『バレエシューズ』が抄訳と完訳で出ていたから。
教文館版は同じ訳者で1979年にすぐ書房から全訳が出ていたらしいのだが、「今回の新訳では分量はほぼ半分だけれど、内容についての理解はこちらの方が濃い」と訳者あとがきにある。
3人の孤児たちの成長とそれを見守る大人たち、学校生活だけでなく働いて賃金を得ることもきちんと描かれているのがおもしろい。何より絵と装丁が素敵で大好きな作品。正直これ以上の訳本はないだろうと思っていた。
福音館から全訳が出ていたので(こちらの装丁も素敵)あまり期待せず一応読んでみた。そこで初めてどこが省略されているのかが分かった。なるほど、確かにここは訳されなくても全体の話に問題はないなと思った。
本来なら翻訳は完訳であるのが望ましいと思うのだが、この作品についてはあまりにも教文館版が完成度が高いので、抄訳もありだと納得させられてしまった。
では福音館版が冗長かと言えばそうではない。これはこれで詳しい描写が作品の理解を深めている。抄訳は長編映画で完訳は連続ドラマみたい。それぞれの良さがあり、どちらもいい。
福音館版で訳者の朽木祥さんを初めて知ったのが、大きな収穫だった。朽木さんの作品は今とても楽しみに読んでいる。
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