『ジェリコの製本職人』

『ジェリコの製本職人』

『ジェリコの製本職人』 ピップ・ウィリアムズ・著 最所篤子・訳 小学館 2024年

同じ作者の『小さなことばたちの辞書』の姉妹編。前作とのつながりを感じながら楽しく読めた。
オックスフォード大学出版局で双子の妹モードと働くペギー。亡くなった母も同じ職人だった。ペギーの仕事は印刷された紙を折り、かがること。仕事中に印刷された断片を読み、製本に失敗した紙をこっそり持ち帰り、読書や勉学への渇望を募らせていく。どんなに望んでも労働者の彼女が大学で学ぶことはできない。だが第一次世界大戦がはじまり、奉仕活動で女子学生のグウェンと知り合ったことで、彼女の運命も変わっていく。
階級差別、経済的困難などを乗り越え、製本所の主任やグウェンやグウェンの通うサマーヴィル・カレッジの図書館司書など、周囲の人々の後押しでペギーが大学への道を切り開いていく姿には胸が熱くなる。

ペギーは植字工ガレスに頼まれてあの『女性のことばとその意味』の製本を手伝うことになる。あの辞書がこういうふうに作られていったのか、とわくわくした。ガレスが「後でもっと刷るために版はとってある」と言った時、『小さなことばたちの辞書』でも、彼が重版するつもりだった、と残っていた組版を見せてもらう場面が思い出された。あそこでは泣いたんだ。なぜ一冊だけ製本するのか、それは「特別なこの世で一冊だけの本」でなければならないから。そこに彼のエズメへの愛情を感じる。でも一冊だけだと思っていたあの本が、後にペギーたちによって数冊印刷されていたことを知って、わずか一冊だけで絶版になってしまったと思っていたのでとても嬉しい。

ペギーたちの母親が女優ティルダと友人で、母の死後もずっと交流が続いている。
前作で後半からあまり出番のなくなった彼女のことが気がかりだったけど、この作品で知ることができた。サフラジェットのWSPUを脱退してVAD(篤志救護隊)としてフランスの病院に派遣されている。これは『サフラジェットの病院』に通じる話で、こんなところにも関連があった!と嬉しくなった。

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