『ジェリコの製本職人』追記 | 日々の雑記
『ジェリコの製本職人』追記

『ジェリコの製本職人』追記

この作品はさまざな要素がぎっしり詰まっていてそれぞれ印象的なのだが、やはり「ことば」についての部分が、前作と呼応していて興味深かった。

『女性のことばとその意味』の製本を手伝った時、ガレスがペギーたちに感謝し、ペギーもエズメに感謝を伝えたかった。

ーことばをありがとう このことばたちを集めて、理解して、敬意を払ってくれてー

ここを読んだとき「小さなことばたちの辞書」にこんな箇所があったのを思い出した。

ーことばを与えてくれた人々が、それぞれのことばに、わたしのカードに書ける以上の願いを託しているとは夢にも思わなかったー

ことばを集めたエズメと、そのことばを使う立場のペギー。2つの作品がここでつながっている。

またギリシャ語の勉強に悩むペギーに、図書館司書のミス・ガーネルがホメロスの『オデュッセイア』の翻訳についてペギーに語る場面がある。これが非常に興味深い。

ある場面で女性たちが殺される、その女性たちはどのように翻訳されているかというと、ある訳では「乙女」、ある訳では「侍女」、またある訳では「娼婦」だという。
どう呼ばれるかがなぜ大事なのか?と尋ねるペギーにミス・ガーネルは答える。

ーわたしたち女性を説明するために使われることばは、わたしたちの社会における価値を定義する。そして社会にどう貢献できるかを決める。また、わたしたちについてどんな感情をもつべきか、どう判断を下すべきかを人々に指示するものでもあるー

この部分、前作でも似たような文言があった。

ーわたしたちを定義するために使われることばは、わたしたちが他者との関係で果たす役割を説明していることがほとんどだー



では、この女性たちはどう呼ばれるのが正しいのか?と再び問うペギーに彼女は答える。

ーこの女たちは奴隷だった。古代ギリシャではあまりにも当たり前の境遇だったから、物語の語り手は説明する必要がなかった。でも現代のイングランドで、この物語を正しく理解するには、この女性たちの身分を明確にすることばを使う必要があるー

ここでペギーはボンドメイド(奴隷娘)と言う。あのエズメの辞書に載っていたことば。うわー、ここであの作品のキーワードが出てくるなんて、と興奮した。

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