映画「教皇選挙」

映画「教皇選挙」

映画「教皇選挙」2024年 アメリカ・イギリス
5/29 OttOにて鑑賞

公開時から好評で見たいと思っていたけど、どうせ無理だろうからと諦めていたら、新しく出来たミニシアターで上映された。諦めてたのでネタバレも含め色々感想を読んでしまっていたのが残念だったけど、それでも充分楽しめた。色々思うところがありすぎてまとめきれないので、とりあえず思いついたことだけ書いてみる。

教皇選挙ーコンクラーベという全世界で知られているが、密室で行われるため詳しいことはわからない行事。宗教的で神聖なイメージがあるけど、投票をめぐるあれこれ、票読みや票固め活動、ライバルの引き下ろし画策、スキャンダルの発覚などは世俗の選挙と変わりない。

建物、衣装など美術が素晴らしく、それを見るだけでも楽しかった。

投票が進むに連れ脱落していく有力候補者、逆にジリジリと数を増やしていく者。はたして決着がつくのは何回目の投票か。それほど劇的なことが起こらなくても緊張感が続き、ちゃんとミステリーになる。

俳優陣も良かった。選挙を取り仕切るレイフ・ファインズをはじめ、有力候補者の面々、お世話係のシスター等々全員が適役。特にシスター・アグネスのイザベラ・ロッシリーニ、ベニテスのカルロス・ディエスが良かった。

印象に残ったシーン。後から到着した、前教皇から極秘で枢機卿に任命されていたベニテスが皆に紹介され、食事の前のありふれた祈りの後に、満足に食事を取れない者たちへの祈りとお世話係のシスターたちへの感謝の言葉を述べた時。シスター・アグネスのはっとした顔が一瞬映る。共に出番は少ないが抜群の存在感を示し物語の鍵となる2人。その一瞬の触れ合いを感じさせられた。突然出現した新しい枢機卿に疑問を持っていても、あの言葉で彼の人となりがわかり、前教皇の任命が妥当なものだったと納得させられる。

またシスター・アグネスの「神は目と耳を与えてくださった」とある候補者を告発する場面。かっこよかった。
そしてベニテスが、テロで興奮して差別主義を叫び混乱した枢機卿たちへ投げかけた言葉。正確ではないけど「みんな本当の戦争を知らない、自分のことしか考えていない、ここ数日のくだらなさ、ここは教会ではない、戦うべきなのは自分自身だ」と本当に真っ当な言葉で騒ぎ立てていた者たちを黙らせる。静かな佇まいのまま。

イザベラ・ロッセリーニは有名だけど、ベニテスのカルロス・ディエスはほぼ無名。彼からは威圧感を感じないが、もしある程度有名な俳優だったら、最初から何かあるんじゃないかと思っていただろう。

ローレンスが最初から苦悩に満ちた顔してるのが気の毒で、なんとか晴れ晴れした顔になってほしいなと思っていたので、ラストシーンで朝中庭を眺める顔が、ようやく少し明るくなっていてホッとした。このシーンあまり劇的でないのも良かった。ローレンスの目に映るのは、まだ幼さの残るシスターたち(見習いかしら?)が建物から出てくるところ。ごくありふれた朝の風景、地味なほどの場面で終わる。

パンフレットでバチカン市国の地図が載っていたので、投票の行われるシスティーナ礼拝堂と宿泊施設である聖マルタの家の位置関係がわかった。シスター・アグネスが聖マルタの家の運営責任者であることも書いてあった。
聖マルタの家について調べたが、ここはヨハネ・パウロ2世の在位中1996年に枢機卿たちの宿泊施設として建設され、実在のフランシスコ前教皇もここに住んでいたという。
この映画の中で死去した前教皇の部屋があったのも、この聖マルタの家だったようだ。
最初にローレンスが死去した教皇の部屋に行くときと、もう一度コンクラーベの最中に行く場面があるが、どちらもエレベーターの中で「8階です」とアナウンスがあった。最初はエレベーターでどこ行くのかと思っていたけど(だって教皇がそんなホテルみたいなところに住んでいるとは思わなかったので)、2回目は同じ構図だったので、ああ、あの部屋に行くのかと思った。でもこの行動、後で騒ぎが起こらなかったのか?

新教皇が決まり白い煙が上がるはずだが、この場面はあえて映さず(1回目の黒い煙の時は映した)人々の歓声の中空を見上げるローレンスの姿だけを映す。
そういえばこの映画徹底して外の世界を映していなかった。あくまでも閉じた世界の中だけの話だった。

前教皇がチェスで「8手先を読む」と言われていたけど、はたしてこの結果も読んでいたのだろうか。自分の寿命を感じて手は打っていただろうが、全てを見通していたのかどうかはわからない。

前情報をほとんど入れていない娘の感想もおもしろかった。わたしもそうだったらまた違う感想をもったかもしれない。細かいところは見逃しているので、確認のためにもう一度見たいと思った。それだけおもしろい映画だった。

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2025.05.31 19:29
風太
スウさん そうなんです、あのみんなが立ち直す場面おかしかったですよね。
あの祈りでベニステは単なるポッと出ではない、存在感を示しました。
シスター・アグネスの信頼も勝ち得ましたね。
一回目の投票でベニステに一票入ってましたが、彼自身はローレンスに入れたと言ってましたから、あの祈りを聞いて彼に決めた枢機卿が居たんでしょうね。

2025.05.31 16:11
スウ
ほんとに面白い映画でしたね。私ももう一度見たいくらいです。
ベニテスの食事の前の祈りのシーン、印象的でしたね。お決まりの祈りの後、枢機卿たちがすぐに座ろうとするところ、まだ誠実な祈りの言葉が続いておおっと…って感じでみんな立ち直すのも可笑しげでした。

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