ヨハン・テオリン/著 三角和代/訳
早川書房 2016年刊
エーランド島シリーズ最終話。夏という季節もあってか、いつもと雰囲気が違う。何だか島全体が浮かれている。いつの間にこんなリゾートっぽくなったのだろう?わたしが勝手に思い描いていた、都会の喧騒とは縁のない素朴な人々、というイメージが少し崩れた。この島にもこういう種類の人がいるのか。そして当然イェロフとはソリが合わないだろうなあ。
そのイェロフは前作でホームを出て自分の家に戻ったが、どうもそれは気候のいい春夏だけのことで、秋冬はまたホームに戻るらしい。あの厳しい冬はどうするのかと案じていたのでホッとした。
今回は登場人物の視点がけっこうクルクル変わる。時間軸は一定なのでそれほどややこしくない。今回の主人公ともいうべき「帰ってきた男」の過去が挿入され、いつも通り現在と過去の話が並行して進んでいく。なぜ彼が今こういう行動を取るかということが、この壮絶な過去によって次第に明らかになっていく。ここだけで1つの物語になる。途中で彼がどこから帰って来たかわかるのだが、ここで前半に大きなミスリードがあったことに気づかされ、思わず「そうだったのか!」と唸ってしまった。イェロフの観察眼と洞察の深さは相変わらずだが、悲しい結果も引き寄せてしまう。でも彼にはこれからも今の生き方を貫いてほしい。
過去の話も現在の事件も今までよりスケールが大きく、ページ数も多く読み応えがあった。このシリーズを読めて幸せだった。
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