世界の終わりの七日間

世界の終わりの七日間

ベン・H・ウィンタース/著 上野元美/訳
早川書房 2015年刊
三部作の最終話。いよいよあと一週間に迫った終わりの日。ヘンリーが今回探すのは妹のニコ。正直今までの彼女の言動は好きにはなれないし、仲間たちとの穏やかな日々を捨ててまで探し出すこともないのにと思っていた。でも同行者のコルテスの言うとおり、彼は何を見ても妹を思い出さずにはいられない。それは仕方ないことなのだ。彼にとってたった一人残った血縁者である妹と、世界の終わりにはせめて一緒にいたいという気持ちは、痛いほどわかる。そして彼と彼女はやはりよく似ている。どちらも自分の信じるものに(方向はまるで違っても)頑固に諦めず突き進む。
はたして世界の終わりは本当に来るのか?ニコの信じる回避の方法は本当にあるのか?結論はわかり切っていたとはいうものの、何かに希望を見出さずにはいられないのが人間だ。終わりまでにどう過ごすかも強制はできない。こんな時でも、というかこんな時だからこそ、自分の欲望に忠実に、悪魔的に振る舞う輩もいる。それもまた人間の姿だ。
アーミッシュは意外だったが、終末の絶望感漂う世界で、穏やかに生きる人々が居ることにリアリティを持たせられる。たとえそこに欺瞞があろうとも、苦痛を引き受ける人間のぎりぎりの愛情がある。ラストシーンが美しく厳かな一枚の絵のようだ。

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