久保田香里『青き竜の伝説』が物足りなく思ったのは、わたしが長らく愛読している長岡良子「古代幻想ロマンシリーズ」のせいかもしれない。
律令国家体制が整う以前の時代を背景に、実在架空の人物が入り乱れ、それぞれが生き生きと活躍する、古代史好きにはたまらないシリーズ。政治に翻弄されながらその時代を力のかぎり生きた人々に、超常力を持つ不思議な存在を絡めて奥深い世界を作り出している。
超能力者の存在は歴史的に正確さに欠けるのかもしれないが、新しい国家新しい政治体制が確立する過程で、人々の暮らしに根付いていた信仰の対象の古き神々が、禍々しいものとして貶められ、闇の存在として葬られていった歴史を考えると、そういう存在への哀惜の気持ちが彼らを登場させているのではと思う。それが古代史ファンタジーの傑作(わたしはそう信じている)「古代幻想ロマンシリーズ」なのである。
この作品のおかげで古代史、人物名、それぞれの関係などいろいろ勉強できて感謝している。
『青き竜の伝説』を読んで、長岡さんならどんなふうに描くだろうと想像を膨らませている。
長らく新作の発表がない。お元気でいられるのだろうか。
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