『アクナーテン』クリスティの戯曲

『アクナーテン』クリスティの戯曲

『アクナーテン』アガサ・クリスティー・著 中村妙子・訳 早川クリスティー文庫 2004年

早川クリスティー文庫の一覧に『アクナーテン』という作品を見つけ驚いた。え?アクナトンのこと?クリスティにこんな作品あったのか!戯曲らしいがどんなものかと思わず買ってしまった。
解説が吉村作治で、それによるとクリスティ自身この作品を気に入っていたという。作品が書かれたのが1937年で、出版されたのが晩年の1973年(1976年死去)。気に入っていたのに出版までずいぶんかかったのだなあ。さらに日本での翻訳が2004年。全然知らなかったので、この機会に読めてよかった。

戯曲なのと、アクナトンについては多少知ってるせいで、わりとすらすら読めた。
純粋で繊細な若き王がひたすら自分の理想を追い求め、その高潔さゆえ民や臣下から離反され、狡猾なアメン神官とのたたかいに敗れ去る。人々の幸せのために愛と平等を説いたのに、その人々に理解されないむなしさ痛ましさ。ネフェルティティとの間に深い愛情があったのはせめてもの救いだった。

登場人物もよく知ってる名前が多いなか、王妃ネフェルティティの姉ネゼムートだけがなじみなかった。ただホルエムヘブとの関係から彼女は長岡良子『ナイルのほとりの物語』でのムテムイアに当たる人物ではないかと見当をつけた。

ホルエムヘブとの間に主従を超えた深い友情と信頼関係があったのも嬉しい。だからこそ何度も何度も忠告し懇願した彼の最後の選択は、両者にとって辛いものだったろう。
アイがアテン神官なのは意外だったが、彼も王母ティイもアメン神官ともう少し上手くやるように忠告するのだが、アクナーテンは聞き入れない。せめてこの3人の忠告通り、改革をもう少し緩やかにしていればよかったのに、でも無理だったんだなあ。

この作品のアクナーテンは詩を詠む。その詩がアトン讃歌と呼ばれるものではないかと思う。またネフェルティティの胸像も彼が作ったものになっている。彼は政治家というより宗教家であり芸術家であった。なんとなく俗世では生きにくい人だったのかと、思いを馳せた。

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