映画「ジョニーは戦場へ行った」

映画「ジョニーは戦場へ行った」

「ジョニーは戦場へ行った」(JONNY GOT HIS GUN)
ダルトン・トランボ監督 1971年 アメリカ映画  日本公開1973年

PPMの「虹と共に消えた恋」の中の「Jonny’s gone for a soldier 」の歌詞から連想したのが、この映画「ジョニーは戦場へ行った」
公開時見に行ったのだが、映画館は満席で立ち見だった。当時まだ作家でなくアナウンサーだった落合恵子が、ラジオで「見た後しばらく席を立てなかった」と言っていたが、たしかにすごい衝撃作だった。

今回あらためて調べたら映画の原題は
「JONNY GOT HIS GUN」であの歌とは違い、主人公の名前もジョニーではなくジョーだった。すっかり忘れていた。
原作は1939年にダルトン・トランボが発表した反戦小説で、タイトルは第一次世界大戦時の志願兵募集の宣伝文句だったという。
トランボは赤狩りで映画界から追放されていたが、復帰後に本作の映画を完成させたという。原作発表からこれほど時間が経ってからの映画化だったのは、そういうわけだったのか。公開当時はそこまで知らなかった。

DVDを購入していたが未見のまま。でも強烈に覚えている場面があるので、思い出すまま書いてみる。
50年前に1度見ただけなので、忘れていることも多く間違いはあるだろう。記憶の捏造もあるかもしれないけど、自分にとっていまだに忘れられない事を書きたい。

以下ネタバレあり。


ジョーは第一次大戦の戦場での負傷で目、鼻、口、耳、四肢を失い、首と頭だけが動き触覚だけが残る。それでも軍の実験材料として生かされていた。誰も気づいていないが、彼には意識はあり考える事も出来る。それだけに病院で自分の状況を悟ったときの絶望感が凄まじい。

この彼の病院内での現実がモノクロで、彼の出征前の思い出の場面がカラーで表される。重苦しいモノクロ画面と、生き生きしたカラー画面の美しさとの対比がより残酷さを感じさせた。

印象的だったのが、婦長さんだったか修道女の服を着た女性が、彼の病室が暗い事を気の毒がり、窓のカーテンを開けて光を取り入れてくれた時のこと。光を浴びた彼が、最初は何かわからず、でも体が温かくなってきた事で、これは日の光だ!と気づき歓喜する。太陽だ!光だ!その瞬間画面がカラーに変わり、彼が川の中から真上に飛び出し、水に濡れた顔を空に向けて歓喜の表情を見せる画面が、スローで流れる。ああ、これほど嬉しいのか!と見ていてこちらも涙が出てきた。忘れられない場面だ。

朝にカーテンを開けて夜に閉める。体に日があたり温かくなり、やがて冷えて1日が終わる。また温かさを感じて朝が来た事がわかる。体に感じる日の光で、彼は1日の経過を知る事が出来るようになった。
そして新しく担当になった親切な看護婦(当時)が、クリスマスに彼の腹部に指で「merry Christmas 」と綴る。それにより今日がクリスマスだと知った彼は、それ以降日光による1日の経過と合わせて、今日が何月何日かわかるようになる。

やがて彼は外部との連絡手段に、モールス信号を使うことを思いつく。僅かに動く首と頭を枕に打ちつけて必死にモールス信号を発する。最初は気づかれなかったが、あの親切な看護婦が何かを感じ、上司に伝える。最初は単に体の痙攣だと診断されて相手にされないが、彼女の再度の訴えに病室にやって来た軍人が、ついにモールス信号だと気づく。「何が望みだ?」と額に指でモールス信号で問いかけられ、彼は「自分を見せ物にしろ」と訴える。「それは出来ない」とこたえると「では殺してくれ」と頼む。それも出来ないと断られる。
軍人たちが外へ出てしまうと、彼の意を汲んだ看護婦が彼に繋がれた何らかの管を外す(ここは正確には覚えていない)。それに気づいた彼は彼女に感謝する。しかし病室へ入って来た医師(あるいは軍人か)が間一髪彼の命を救う。看護師は追い出され、彼には鎮静剤が打たれ、窓のカーテンは閉められ、再び彼は闇の中に閉じ込められる。
カーテンは二度と開けられないだろう。あの看護婦は担当を外されるだろう。誰も彼のことを真剣に考えることはしないだろう。それでも彼は意識を保ったまま生き続けるのだ。「殺してくれ」というメッセージを虚しく送り続けるのだ。

もう何といえばいいのか、当時のわたしの衝撃が今もありありと蘇ってくる。その思い出が強烈すぎてDVDを見るのを躊躇わせている。今年終戦80年企画で4K版で再上映されていたそうだけど、わたしは辛くてたぶん見られない。でも多くの人に見てほしいと思う。

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