「木挽き町のあだ討ち」

「木挽き町のあだ討ち」

「木挽き町のあだ討ち」
永井紗耶子/著 新潮文庫 2025年

2023年上半期の第169回直木賞受賞作品。興味はあったのでいつか読もうと思っていた作品。ちょうど映画が公開され感想もぼちぼち上がってきている今、あまり映画に引きずられないうちにと、電子書籍を購入して読んだ。とても心地よい作品で、一気に最後まで読んだ。

2年前の雪の夜、芝居小屋の側で衆人の見守る中果たされた仇討ち。その顛末を知るために、1人の侍が芝居小屋の関係者を訪れた。侍は仇討ちを果たした菊之助の縁者で、関係者からそれぞれ話を聞いていく。

各章ごとに語り手が変わり、最初は通りいっぺんの仇討ちの話が、関係者自身の来し方を語る部分になると俄然おもしろくなる。芝居小屋へと流れて来たそれぞれの人生が、ひとつの物語として読み応えがあった。それは菊之助がこの場所で得た思いと決意を、侍と読者が追体験して知ることになる。
芝居とそれを支える裏方の説明が、それぞれの章で語られるのもよかった。木戸芸者、殺陣師、女形で衣装係、小道具係、戯作者、芝居はこれら裏方が揃ってこそ成り立つ。
第四幕(章ではなく幕となってるのも芝居らしい)で、ああ、そうかとだいたいのカラクリが見えてきた。そこから終幕まで一気に駆け抜けて、芝居のように大団円で終わるのが気持ち良かった。

印象に残ったこと。第三幕女形の二代目吉澤ほたるが、初代ほたるの言葉「世間ってのは、階段みたいになっていて、上の連中は下の連中を見下ろしている」を引いて、その階段の最上層にいる菊之助たち武家の、武家である故の枷に囚われる苦しみを思いやるところ。それは最下層とされる芝居関係者の自分たちも同じ、人間は等しいのだと気づく。人から見下ろされる彼らの方が、優しさと理を知っている。

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