映画「ツーリストファミリー」

映画「ツーリストファミリー」

映画「ツーリストファミリー」
アビシャン・ジーヴィント/監督・脚本  2025年 インド

5/13 OttOにて鑑賞

スリランカからインドに密入国した家族が、身分を偽りながらも次第に周囲の人々に溶け込んでいく様子を描く、ベタだけど笑いと涙のちょっといい人情噺。

実は冒頭のテロップで「本作はいかなる不法移民を許容も奨励もしない(正確には覚えていない)」という文言が出たので、ちょっとびっくりして何かモヤモヤしながら見てしまった。

映画自体は面白かった。近隣の人々との繋がりが深まる過程は微笑ましく、特に老夫婦との触れ合いや、嫌われ者の青年の告白には胸を打たれた。そういう一つ一つのエピソードはとてもいい。素直に感動した。そして不法移民を逮捕するために訪れた警官に対して、人々が家族を庇うやり方がとても自然だった。この家族との付き合いの中で自然に生まれたコミュニケーションのやり方(スリランカ・タミル語を会話の中で取り入れる)を使い、いつもと変わらぬ生活を見せて、ここではみんな仲良く平和に暮らしていることを伝える。決して不自然に力説しない。

それを受けて家族を見逃す巡査長の言葉がいい。

「人に慕われるのは金か権力があるから。でも金も権力もないのに慕われるのは人柄だ」

いい話だ。確かにいい話だ。ただここで映画冒頭のテロップを思い出し、複雑な気持ちになった。これ、つまり「こんないい人柄の移民なら歓迎します」ということではないのか?それ以外の移民は受け入れないのか?現在日本で移民排斥を訴える人の言い分がまさにこれなのだ。

それと悪役の警部が失態を犯したことで家族は救われたのだが、その失態がちょっと酷かった。警部の残酷さを際立たせるためだろうが、あの暴力場面と顛末はやりすぎだと思った。

またシリアスな場面とコミカルな場面が頻繁に入れ替わる、その緩急の付け方がこれは完全に好みの問題なのだが、わたしには少々うるさく感じられた。


本作のパンフレットはとても充実している。物語の背景のインド、スリランカの言語、民族、宗教、生活習慣など、大変勉強になった。その中でもマラヤーラム語とケーララ人の箇所では、映画「私たちが光と想うすべて」の主人公たちの話していたのがこの言葉だったことを思い出した。またこの映画では言葉が重要な意味を持ち物語を動かしている。それが先日の「湯徳章」で知った台湾の多言語に繋がり、映画がいろいろな興味を引き出してくれることがとても嬉しい。

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