韓国ミュージカル『エリザベート』2020年公演版 | 日々の雑記
韓国ミュージカル『エリザベート』2020年公演版

韓国ミュージカル『エリザベート』2020年公演版

韓国のミュージカルはすごいと噂で聞いていた。見たいけど韓国まで行けないしと思っていたら、「韓国ミュージカルon SCREEN」という企画で、映画館で上映されるという。その第一陣が「エリザベート」。幸い県内で上映館があったので、都内に出ないで見られた。


素晴らしかった!これこそわたしが見たかった「エリザベート」だった。

わたしが初めて見たのがウィーン再演版のDVDだったので、それが全ての基本になっている。日本の東宝版は演出が好きではなく、はっきり言えば嫌いなので、あの演出家と演出が変わらない限り、もう絶対見ないと決めている。

この韓国版では演出はウィーン版に準拠していて、それだけでもう素晴らしい。
そしてみんな歌が上手くて安心して聞いていられる。ミュージカルだから当たり前なんだけど、その当たり前が通じないことが、残念ながら日本ではままあるので。

ルキーニがルキーニだった!日本版でトートの家来みたいな扱いを受けていたルキーニだけど、本来この物語を動かしているのは彼なのだ。登場人物の間を自在に動き回り、煽りたて、観客に説明する。歌も削られることなく、皮肉さと軽やかさがある。日本のルキーニにどうしても満足出来なかったけど、ようやくルキーニらしいルキーニに出会えて嬉しい。

シシイ。歌も演技も素晴らしい!一体どこまでが地声なのか、高音になっても力強さは変わらず、とんでもない歌唱力。ダンスも軽やかでクルクル回るし、歌、演技、ダンス、何でも出来る人なんだ。すごい。

フランツ・ヨーゼフ。第一声で何て良い声!と驚いた。若々しい顔なのに低い声。オペラの人らしい。そりゃ上手いはずだ。「夜のボート」や「悪夢」では、もうかわいそうでかわいそうで。シシイいい加減戻ってやれよ、と思ってしまった。

トート。はい、短髪トートですよ、みなさん!日本のお耽美長髪トートが嫌いなので、非常に満足。このトート、ナルシストで勘違い俺さま坊っちゃん。空気読まずに出て来ちゃ振られてすごすご退散する。なんか可愛い。

演出としては一緒だけど、ウィーン版のマテさん(マテ・カマラス)やマークさん(マーク・ザイベルト)みたいに大人っぽいと、その滑稽さや間抜けっぽさはそこまで感じなかった。いつもタイミング悪いなあ、ぐらい。それが顔だちが子どもっぽいせいもあり、それをもっと強く感じた。この子なら「愛と死のロンド」はあってもいいかなと思えた(いつもあの歌はいらんと思っている)「最後のダンス」を結構踊りながら歌ってて、渾身のラストの歌い上げはさすがだった。シシイを最後に迎えたのが白い衣装で、婚礼衣装かよ!と突っ込みたかった。楽しかったよ。


日本の演出、特に東宝版で気に入らなかったところが、ほとんどなかったのが何より良かった。元々日本初演は宝塚で、その演出は宝塚独特のスターシステムに則った、妥当な演出だったと思う。
でも東宝版にする時にそれを引きずってほしくなかった。素直にウィーン版をそのままやってほしかった。
今回の韓国版を見て嬉しかったと同時に、どうしてこれが日本でも出来ないのかと悔しくなった。

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