どれい船にのって | 日々の雑記
どれい船にのって

どれい船にのって

ポーラ・フォックス/著 ホゥゴー政子/訳
福武書店 1989年刊

1974年のニューベリー賞受賞作。
なんというか凄まじい。最初に「史実」として1840年にメキシコ湾で難破した月光号という奴隷船の記録が載っている。これが本当の史実なのかは分からないが、この時代にこういった事実はたしかにあったのだろう。
ニューオリンズに住む13歳の少年ジェシが誘拐され、奴隷船月光号で働かされる。物語はこのジェシの一人称で語られる。攫われたことも驚きながら、その目的が奴隷船で働かせるということも驚き。雑用だけではなく、主な仕事が笛を吹いて奴隷たちを踊らせるのだという。否応無くこの悲惨な状況に投げ込まれたジェシが見た奴隷船の実態の凄まじさには目を背けたくなる。これは映画「アメイジング・グレイス」でも観ていたが、本当にひどい。
奴隷船の実態とともに、当時の奴隷貿易の実態、すでにイギリスは禁じられていて、アメリカでも法律上は禁じられていた。だが現実は密輸は行われていたし、取り締まりの役人には賄賂が贈られていた。みんな奴隷貿易で得る利益の方が大事だったわけだ。作中ジェシも「どこの政府も奴隷貿易には反対だが、そろって名ばかりの反対だ」と言う。この作品はそこもしっかりと書き込まれている。彼は難破によって船から逃れられたのだが、果たして難破しなかったらどうなっていたのか?そのまま無事に家へ帰れただろうか気になる。
帰宅した彼のその後も興味深い。そして最後の部分で奴隷船での経験が、どれほど深い傷となって彼に残されているのかが語られる。そこにタイトル「The Slave Dancer」の深い意味がある。

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