ストックホルムでワルツを
12/2 新宿武蔵野館にて鑑賞。
思ったよりたくさんジャズの名曲が聴けて楽しかった。それとスウェーデンのフアッション、ヒロインの着る洋服の色や柄、調度品などとても素敵。
実在のスウェーデンの歌手モニカ・ゼタールンドが、スウェーデン語でジャズを歌って成功する話、という前知識だけで観たので、色々意外だった。苦難の末成功すると思っていたら、下積み時代の描写は割と早く終わって、売れた後の私生活やら何やらが結構大変。パンフレットによると1960年から1964年の間を描いているらしいが、そんな短い間にあんなにあれこれあったのかと驚く。しかし、タバコはプカプカ酒はガブガブ、娘の面倒はみないわ、恋愛面でもちょっとどうかと思うし。正直途中からは、これは成功の後の転落を描くのがメインかと思ったほど。でもどん底から這い上がる姿はよかった。彼女の上昇志向は嫌いではない。決して歌うことをあきらめなかったのは偉い。仕事も上手くいき、父親とも和解し、本当の愛も見つけ、と出来過ぎのようだけど、彼女はちゃんと努力してきたんだから祝福できる。ハッピーエンドでよかった。
スウェーデン語でジャズを歌うって、スウェーデン語に訳した歌詞で歌うのかと思っていたら、スウェーデンの詩人の詩をジャズの曲にのせて歌ったのでびっくりした。えっ、それだと違う作品にならないの?でも一番最初に彼女がカフェで、詩集を読みながら、次第にジャズの曲にのせて口ずさんでいくシーンはとてもよかった。日本でも必ずしも海外の曲の日本語歌詞が、正確な訳になってるわけではないものね。
唱歌「故郷の空」だって、原曲の歌詞(ライ麦畑で出会う)とは違うものだし。
ニューヨークで失敗した時、クラブの支配人が「彼女は白すぎる」と言ってたけど、それと演奏しているバンドのメンバーが、黒人ということで控室すらない状態だったけど、あの時代はまだまだアメリカでの人種差別は酷かったんだなと感じた。彼女はジャズが好きでそれが歌いたくて、そのジャズが生まれた背景や現在彼ら黒人が置かれている状態には全く気がついていない。偏見がないといえばそうだけど、あまりにも能天気に見えただろう。それがエラ・フィッツジェラルドから「マネではなく自分の魂を込めて歌え」と批判された原因なんだろうと思う。単に流暢な英語で歌うだけでは、その歌の心を歌うことは出来ない。うーん、でもそうすると、やはり母国語でないと本当に心こめるのは難しいのだろうか。それにその歌の魂は英語の原歌詞にあるのだろうから、それを勝手に違う意味のスウェーデン語で歌っていいのだろうか。ちょっとグダグダ考えすぎてしまった。