半身 | 日々の雑記
半身

半身

サラ・ウォーターズ/著 中村有希/訳
創元推理文庫 2003年刊

「茨の城」がおもしろかったのでこれも読んでみた。
ミステリかと思っていたらオカルトっぽかったり、ゴシックロマン調だったり、「茨の城」でもちょっと感じた百合っぽかったり、ジャンル分けが難しい。半分くらいは予想ついたけど、やはりラストの展開は驚いた。ああそういえばあれも伏線かと思うところ多く、もう一度読み返したくなる。たいへんおもしろく読んだ。
しかし読後に爽快感はあまりなく、ヒロインが気の毒でならない。彼女自身の問題もあるが、やはりあの時代の社会が求める(押しつける)女性像の犠牲者に思える。当時(19世紀)女性は男性や家の従属物でしかなく、そこから脱する手段はほとんどない。自立するなんて貴婦人のすることではなく、それをはかろうとする女性は家族からも世間からも変わり者として白い目で見られる。(母親に「恥」とまで言われる) それをはねのけ自立を勝ち取るために、孤独に耐え戦い抜く強さはヒロインにはなかった。不安定で危なっかしくて、でもプライドは高くて、といろいろ痛い彼女だが、自分にも覚えのあることなので嫌いにはなれない。普通の女性にはそれほどの才能も強さもないのだから。
同じような時代と女性を描いた映画「ミス・ポター」や「ある貴婦人の肖像」それと観ていないけど「未来を花束にして」を思い出した。今の時代に生まれて良かったとしみじみ思う。

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