『洪水の前』ー赤川次郎ミステリーの小箱 自由の物語ー

『洪水の前』ー赤川次郎ミステリーの小箱 自由の物語ー

『洪水の前』ー赤川次郎ミステリーの小箱 自由の物語ー
赤川次郎・著 汐文社 2018年

わたしの若い頃、赤川次郎はユーモア青春ミステリーで人気で、ベストセラーを連発していた。でもその他にもホラーや普通のミステリも書いていて、特にホラーは面白かった。彼の本領はこちらではと思っていた。ユーモア小説ではあっても、人間の悪意も容赦ない残酷さも描いていた。そしてわたしが1番好きだったのは、『マリオネットの罠』だった。

久しぶりに赤川次郎の短編集を読んだ。相変わらず読みやすい。これだけすいすい読ませるのはやっぱり上手いと思う。

「愛しい友へ…」
地方都市で工場閉鎖に伴う混乱に翻弄される人々。社会問題、家族間の葛藤、友情が交錯する。ホラーというよりファンタジー。

「終夜運転」
傲慢な元政治家がある夜戦時中にタイムスリップするが、その時出会った娘が戦時中自分の母の同僚だったと知る(戦時中男性の代わりに女性たちが働いていた)。その娘と母親の運命の分かれ目が辛い。

「日の丸あげて」
日の丸を上げることに固執する男性。大勢に迎合する人の怖さと異物を排除しようとする勢いが、あっという間に広がっていく。まるで現代の社会の鏡のようだった。

「洪水の前」
この作品だけ書き下ろし。戦争の始まりに警鐘を告げる作品。最後のページに作者の言いたいことが詰まってる。今、この時代に、心にしっかり留めおきたい

ー武器を取って戦う「戦闘」のずっと前から「戦争」は始まっている。「自分たちだけが正しい」と信じ込み、違う立場の人間を非難する。 そうしながら、人間の中ではすでに戦争が始まっているのだ。戦争は国と国も間で起こる前に、自分たちの心のなかで起きている。そして、一旦それが大きな流れとなると、洪水となって、誰にも止められない勢いで、人を押し流してしまう。ーp246より

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