赤く微笑む春 | 日々の雑記
赤く微笑む春

赤く微笑む春

ヨハン・テオリン/著 三角和代/訳
早川書房 2013年刊
エーランド島シリーズ3作目。読み慣れたせいか、今までで1番読みやすかった。今回も過去の物語が挿入されるのだが、それが前ほど煩く感じられず、物語の進行を妨げずすんなり読めた。島の風土と人々の暮らしの描写も相変わらず丁寧で、大きな事件が起きなくても、ただそれだけで充分物語として楽しめる。
いろいろ問題のある家族が出てくるが、それはつまりどんな家族でもそうであるということで、一応いい結果に落ち着いてよかった。
探偵役というかアドバイス役のイェルロフは、冒頭で施設を出て自宅に帰る。別に余命宣告されたわけではなく(まだ頭も体も充分働く)、最後は家で迎えたいという思いで決心する。ただこれが許されるのは、医師や看護師の巡回があり、まだ彼がゆっくりでも自分で体を動かせるから。そういう体制が整っていることが羨ましいが、第1作より確実に彼の老いも進んでいる。次作がシリーズ最終作だそうだが、淋しいけれど、彼と島の人々の物語の行く末を見守りたい。

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