十三番目の子 | 日々の雑記
十三番目の子

十三番目の子

シヴォーン・ダウド/著 パム・スマイ/絵
池田真紀子/訳 小学館 2016年刊
以前読んだ「ボグ・チャイルド」、「怪物はささやく」(著者の原案をパトリック・ネスが書き上げた)のダウドの作品。ダウドは2006年に作家デビューし、活躍が期待されながら2007年に亡くなっている。日本ではダウドの作品は全て死後に出版されている。

静かで美しい神話のような作品。ほぼ全ページに挿画があり、青と黒のシンプルで力強い絵が流れるように続き、一枚の絵物語のよう。それがよけいに神話的な雰囲気を感じさせる。Amazonの原書の書影では左右反転している。
暗黒の神と村との契約。「1人の女の産んだ十三番目の子を、その子の十三歳の誕生日にいけにえにささげれば、十三年の繁栄が約束され、したがわなければ村が滅びる」恐ろしいのはこんな契約を(というより呪いだ)村人たちが受け入れていること。誰が我が子をいけにえにしたいものか。女たちは十二人産んだ後は産もうとしない。それは当然の思いだ。けれどある女の十二番目のお産が双子だったため、そのうちの1人が十三番目の子になってしまう。
自分は嫌だが誰かがいけにえになってくれるのは大いに結構。「十三年の繁栄」という欲望に目がくらんだ村人たちのあさましさ、醜さ。対照的に、愛情で結ばれ運命を共にした家族の姿が美しい。ここにはいつの世も変らぬ人間の姿が描かれている。
最後にきょうだいが踏むエリウの地。著者からの言葉として「”エリウ”は現在のアイルランド(ゲール語名"エール")の古い呼び名」とある。著者の両親はアイルランド系だという。作品に漂うケルトやアイルランドっぽさはそのせいか。

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