ひとつの作品から
ひとつの作品からどんどん違う作品に興味が広がっていくことがある。
『小さなことばたちの辞書』を読んでいて、以前ちらっと見た映画「博士と狂人」を思い出した。WOWOW放送でじっくり見る時間がなくて冒頭部分だけ流し見していたのだ。
著者あとがきに映画の原作「博士と狂人」に触れてあり、あれがその映画化作品だったと知った。そして著者の「この物語のどこに女性がいるのだろう」という言葉にはっとした。そうかそこからこの物語が生まれたのか。
辞書編纂という魅力的な物語なので、機会があれば今度はしっかり見たいという気持ちと、この作品を読んだ後では女性の描き方にモヤモヤするだろうから、見なくてもいいかなという気持ちもある。
この作品ではサフラジェットの活動の描写もあり、ショックだったのはハンストしていたサフラジェットたちに強制摂食させていたところ。手足を押さえつけ無理矢理経管栄養を摂らせる記事を読んだエズメが「まるでレイプ!」と憤る。この場面、『ウーマン・イン・バトル』で絵で見ていたはずなのに、ここを読むまで「レイプ」という言葉が浮かばなかった。確かにこれはレイプだ。
この強制摂食については『サフラジェットの病院』でも取り上げてあり、その行為が危険であり健康を阻害することが医学的に指摘されている。
また『サフラジェットの病院』ではフローレンス・ナイチンゲールに関する記述が出てきた。当時の女性が置かれた厳しい環境について述べ、
ーナイチンゲールが30歳になる前に「死にたくてたまらなかった」のも無理からぬことであるー
と書いてあって本当に驚いた。
ナイチンゲールを主人公にした藤田和日郎の漫画『ゴーストアンドレディ』とそれをミュージカル化した劇団四季の「ゴースト&レディ」にその描写があるのだ。
そもそもの発端、フロー(ナイチンゲール)とゴーストのグレイとの出会いが「死にたいので殺して下さい」とフローがグレイに頼みに来るのだ。物語のために作られたエピソードだと思っていたけど、本当にナイチンゲールがそう思っていたなんてすごい。
さらに『サフラジェットの病院』の主要登場人物、医師のルイザ・ギャレット・アンダーソンは1910年ナイチンゲールの死亡診断書に署名しているという。
考えてみればナイチンゲールもまた『サフラジェットの病院』の時代から50年以上前のクリミア戦争時、女性だからという偏見に負けず戦場で負傷した患者の看護に奮闘していた。彼女たちの同志だ。
ひとつの作品から違う作品へ。そこからまた違う作品へ。次々と興味は尽きない。
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