映画「パフィンの小さな島」のイザベルを見て思い出したのが、キンダートランスポートを扱った本だった。
キンダートランスポートはナチスの迫害からユダヤ人の子どもたちだけでも救おうと、鉄道や船でイギリスなどの国へ避難させた人道支援活動。
アニカ・トールの『海の島』(菱木晃子・訳 新宿書房 2006年)
ナチスの迫害を逃れ両親と別れオーストリアのウィーンからスウェーデンへ移住した12歳のステフィと7歳のネッリ。両親は何とかして家族でアメリカへ移住する手段を得て、2人を迎えに来る予定だった。だがそれにはかなり長い時間がかかる。別々の家庭に引き取られ、慣れない異国での生活になかなかなじめない姉に比べ、妹はすんなりなじんでいく。そしてなじめばなじむほど妹が故国の言葉を忘れていくのを姉が心配する場面があり、ここが「パフィンの小さな島」のイザベルに似ていると感じた。
『おとうさんのポストカード』(那須田淳・作 講談社 2025年)
ドイツからイギリスに渡った実在の人物の物話。イギリスにいった当初は英語にも苦労していたハインツが、次第に英語に慣れ電話でドイツの父親と話す時に、父親の言う言葉が分からず愕然とする場面がある。父親は英語の読み書きは出来ても会話がは苦手で、2人の間で話が通じなくなる。これは辛い。その後父親から届くポストカードは英語で書かれるようになる。子どもの安全のためにやむを得ないことだったけど、こういうことが起こるのか。今いるところでしっかり居場所を作ることは大事だけど、今度は今までの自分を見失う怖さも感じてしまうのかもしれない。言葉は自身のアイデンティティにつながる。
山崎豊子『大地の子』で主人公が日本語を忘れないようにしていた姿を思い出した。
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