映画「はだしのゲンはまだ怒っている」

映画「はだしのゲンはまだ怒っている」

映画「はだしのゲンはまだ怒っている」
込山正徳/企画・監督・編集 2025年

4/8 OttOにて鑑賞

原作者中沢啓治さんの妻をはじめ、講談「はだしのゲン」を演じ続ける講談師、原爆当時の記憶を語る被爆された方たち、「はだしのゲン」の英訳版を作った人たち、その他さまざまな人の証言を通して、「はだしのゲン」の誕生から現在を見つめるドキュメンタリー。

近年図書館や教科書から「はだしのゲン」が消えているという。それは広島でさえそうなのだということに驚く。その理由はいろいろあるだろうが、その一つに作品中でゲンがアメリカに向かって怒りをぶつけている描写が、今の政府の気にいらないのだろうという指摘があった。ああ、またそれなのか、と情けなく思う。
アメリカでは、原爆投下が戦争を終わらせたという認識が根強くある。原爆の実態が正しく伝わっていないのだ。だからこそ英訳版を作った人たちがいることに感謝したい。
それと、教育上望ましくないという理由。わたしは残酷な場面のせいかと思ったら、なんでも鯉を盗む場面があって、盗みはいけない事だから、という。なんというこじ付けだろうか。
また歴史認識に誤りがあるという人の意見もあった。その人の持論は「あの戦争は日本が追いつめられやむなく始めたもの」という。そういう考えがあることは知っている。わたしの父もそう言っていた。しかし軍部が暴走した事は事実だし、他の国を攻撃して占領して勝手に国を作った事が正しいとは言えないだろう。

こういう近年の風潮をみると、国に都合の悪いことには蓋をして、排斥しようとする力が働いていることを感じる。だからゲンは「まだ怒っている」のだ。わたしたちはこの「怒り」を決して風化させてはならないと思う。

終盤に、原爆を受け自身は助かったが幼い弟を亡くした方が、腹話術で原爆を語る公演が描かれていた。弟の死の場面は悲惨で辛かったが、この方は最後に日本の加害責任についてもきちんと述べていて感動した。この方はもう90歳を越えていられた。被爆された証言者の方たちも皆高齢で、このインタビュー後に亡くなられた方もいた。この方たちの証言を無駄にしてはならないと思う。ここでも「医の倫理と戦争」と同じく勇気をもらえた。

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