『劇場という名の星座』

『劇場という名の星座』

『劇場という名の星座』
 小川洋子/著 2026年 集英社

現在建て替えのため一時休館中の帝国劇場を題材にした作品。実は申し訳ないが、何度か観劇したけどそんな特別な劇場か?と、あまり思い入れは持っていなかった。俳優さんたちが「あの帝劇の舞台に!」とか「帝劇で0番に立てた!」とか感激しているのを見聞きしているので、そうか演者さんにとってはそれだけ特別なんだなあと、とは思っていた。

だけどこの作品集で取り上げられているのは、帝劇の表舞台ではなくそれを裏で支える人々だった。それがとても良かった。その係の多さに、え、こんな係もあるの?と驚いた。客席の案内係、エレベーター係、ミュージカルの稽古ピアノ係、楽屋係、売店、その他あらゆる要望、変更、苦情に対処する何でも屋の幕内係(着到板の名前書きも含まれる)。これら裏方さんプロ集団がいてこそ舞台の幕は上がる。そのことをあらためて思い知った。
自分も見たことある公演や、具体的な名前は上がってないけどこれはあの役者さんだなとわかることもあって、その度にちょっと嬉しくなった。
そして謎の少年、最初は本当に紛れ込んだ子供だと思っていたけど、次第に誰のことか分かってきて、彼がこの劇場にかけた思いの強さを感じた。彼をはじめとした多くの人の思いが、この劇場を建て動かしてきた。ここまでの思いをかけられて、なんて幸せな劇場だろう。

いろんなエピソードの中、「ホタルさんへの手紙」と「一枚の未来を手にする」と「こちらへ、お座り下さい」が印象に残った。

劇場としては日生劇場や自由劇場の方が好きだけど、でも新しい帝劇ができたらやはり一度は行ってみたいなという気になった。

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