「CHESS THE MUSICAL」
CD「CHESS THE MUSICAL」
2025年ブロードウェイで上演されたミュージカル「CHESS」のキャストによるレコーディングCD。何度も上演されその度に「楽曲は素晴らしい、しかしストーリーが‥‥」と言われ続けたミュージカルの新演出版。ようやく納得のいくストーリー展開になったらしい。
(下の白いCDは2008年のロンドンでのコンサート・バージョンのもの)
わたしも2015年に初めて観劇した日本版の「チェス・ザ・ミュージカル」以来、このストーリーはこれでいいのか?とモヤモヤと悩み続けた。その後2008年のイギリスでの「CHESS IN CONCERT」のCDとDVDを購入して(海外版なので日本語字幕なし)鑑賞したり、2020年日本での「CHESS THE MUSICAL」を3回も鑑賞したが、どちらも今ひとつ納得できなかった。特に2020年の公演は主要3役(アナトリー、フローレンス、フレディ)に海外からの演者を招き、全編英語での公演だった。ラミンやサマンサが日本で見られる喜びと、アービターがシュガーさん(佐藤隆紀)だったし、ものすごく期待していた。でもこの公演ではアナトリーとフローレンスの恋愛が全面に押し出されていて、そこがあまり好きではなかった。これならコンサートバージョンだった2008年のイギリス版の方が好きだ。演者もラミンはアナトリーにしては色っぽすぎたし、イギリス版のジョシュ・グローバンの方がわたしの考えるアナトリーらしかった。演者もアービターを除いてイギリスのコンサート版が一番好きだ。アービターだけは2015年の田代万里生くんでお願いしたい。というわけでもう「CHESS」はコンサート・バージョンの上演だけでいいんじゃないかと思っていた。そこに2025年のブロードウェイ公演が登場した。しかもアーロン・トヴェイトが出演するって?と懲りもせずまた期待を膨らませていた。
今回のブロードウェイ公演を実際に観劇した、フレディ役のアーロン・トヴェイトファンの人のサイトで、ストーリーと楽曲の説明がされていたので読んでみた。なるほどアナトリーとフローレンスが恋に落ちる過程が、今までよりわかりやすくなっているらしい。2020年の日本での公演でも、やはり恋愛重視の演出でどうにも居心地が悪かった。だから今回はそこがまあまあ納得のいくものになっているなら、もうそれでいいのかもしれない、と諦め気分で思った。もう考えるの疲れたしなあ。
ただこのストーリーを受け入れると、わたしがずっと悩み考え抜き、最後にようやく思い至った「アナトリー“人でなし説“」が宙に浮いてしまう。これはチェスというゲームに魅入られた3人が、国家の思惑で翻弄される話だ。チェスは純粋なゲームのはずが、国家の威信をかけた戦いにすり替わっている。そこには個人の思いなど踏みにじられる非情な世界がある。それでも彼らはチェスを愛する。またフローレンスとフレディは、それぞれチェスを通じて、母親と父親への切ない渇望を抱いている。しかしアナトリーだけは他のことよりもただただチェスを純粋に愛している。彼が渇望するのはチェスに専任できる静かな環境。常に監視されるようなソ連よりも自由にチェスができる西側に亡命してみたが、結局そこでも人々の好奇の目からは逃れらず身辺の騒がしさは同じだった。どこでも同じなのなら、愛する故郷の地に戻ろう、フローレンスのために父親を彼女の元に返す条件をつけて、と思ったのではないか。そこには確かにフローレンスに対する愛情もあったはずだ。このフローレンスの父親については、今回のブロードウェイ版で初めて舞台に登場し彼女と再会したという。これまでの公演では結局彼の生死は分からないという、なんとも後味の悪い結末だったので、これは良かったなと思う。しかし以前の生死不明という残酷な展開も、個人の思いなど平気で踏みにじる大国の理不尽さを見せるという、この作品のテーマを表していたのかもしれない。見せ方が下手すぎるけど。
とにかく考えに考えてこの「アナトリー“人でなし説“」でようやく自分を納得させていた。そしてこれまで触れた公演では、やはり2008年のイギリスでのコンサート・バージョンが一番いいと思った。しつこいけどアービターだけは田代万里生くんでお願いします。初めてみたアービターが彼だったせいもあるけど、彼の「ゲームはそれ自体がプレイヤーより優先される」という台詞が頭から離れない。
今回のBWミュージカル版は楽曲の順番を変え、削った曲、追加された曲もあるという。CDを比べたら確かに曲が減っている。2008年版より全体で10曲も減っている。そして新しくスベトラーナの曲が増えた。その代わり彼女が歌っていた「SOMEONE ELSE’S STORY」がフローレンスが歌っている。あの曲の方が良かったのに。あと「EMBASSY LAMENT」がなくなっている。それなのに「MERANO」は残ってる、少し短くなってるけど。全体にテンポは2008年よりゆっくりに感じるが、曲数が少ないので全部聞いても20分近く短くなっている。最初は戸惑ったけど聞いているうちに気にならなくなった。みんな上手いので楽曲の素晴らしさを堪能できる。これからしばらくはこれを聴いて楽しもうと思う。
2025年ブロードウェイで上演されたミュージカル「CHESS」のキャストによるレコーディングCD。何度も上演されその度に「楽曲は素晴らしい、しかしストーリーが‥‥」と言われ続けたミュージカルの新演出版。ようやく納得のいくストーリー展開になったらしい。
(下の白いCDは2008年のロンドンでのコンサート・バージョンのもの)
わたしも2015年に初めて観劇した日本版の「チェス・ザ・ミュージカル」以来、このストーリーはこれでいいのか?とモヤモヤと悩み続けた。その後2008年のイギリスでの「CHESS IN CONCERT」のCDとDVDを購入して(海外版なので日本語字幕なし)鑑賞したり、2020年日本での「CHESS THE MUSICAL」を3回も鑑賞したが、どちらも今ひとつ納得できなかった。特に2020年の公演は主要3役(アナトリー、フローレンス、フレディ)に海外からの演者を招き、全編英語での公演だった。ラミンやサマンサが日本で見られる喜びと、アービターがシュガーさん(佐藤隆紀)だったし、ものすごく期待していた。でもこの公演ではアナトリーとフローレンスの恋愛が全面に押し出されていて、そこがあまり好きではなかった。これならコンサートバージョンだった2008年のイギリス版の方が好きだ。演者もラミンはアナトリーにしては色っぽすぎたし、イギリス版のジョシュ・グローバンの方がわたしの考えるアナトリーらしかった。演者もアービターを除いてイギリスのコンサート版が一番好きだ。アービターだけは2015年の田代万里生くんでお願いしたい。というわけでもう「CHESS」はコンサート・バージョンの上演だけでいいんじゃないかと思っていた。そこに2025年のブロードウェイ公演が登場した。しかもアーロン・トヴェイトが出演するって?と懲りもせずまた期待を膨らませていた。
今回のブロードウェイ公演を実際に観劇した、フレディ役のアーロン・トヴェイトファンの人のサイトで、ストーリーと楽曲の説明がされていたので読んでみた。なるほどアナトリーとフローレンスが恋に落ちる過程が、今までよりわかりやすくなっているらしい。2020年の日本での公演でも、やはり恋愛重視の演出でどうにも居心地が悪かった。だから今回はそこがまあまあ納得のいくものになっているなら、もうそれでいいのかもしれない、と諦め気分で思った。もう考えるの疲れたしなあ。
ただこのストーリーを受け入れると、わたしがずっと悩み考え抜き、最後にようやく思い至った「アナトリー“人でなし説“」が宙に浮いてしまう。これはチェスというゲームに魅入られた3人が、国家の思惑で翻弄される話だ。チェスは純粋なゲームのはずが、国家の威信をかけた戦いにすり替わっている。そこには個人の思いなど踏みにじられる非情な世界がある。それでも彼らはチェスを愛する。またフローレンスとフレディは、それぞれチェスを通じて、母親と父親への切ない渇望を抱いている。しかしアナトリーだけは他のことよりもただただチェスを純粋に愛している。彼が渇望するのはチェスに専任できる静かな環境。常に監視されるようなソ連よりも自由にチェスができる西側に亡命してみたが、結局そこでも人々の好奇の目からは逃れらず身辺の騒がしさは同じだった。どこでも同じなのなら、愛する故郷の地に戻ろう、フローレンスのために父親を彼女の元に返す条件をつけて、と思ったのではないか。そこには確かにフローレンスに対する愛情もあったはずだ。このフローレンスの父親については、今回のブロードウェイ版で初めて舞台に登場し彼女と再会したという。これまでの公演では結局彼の生死は分からないという、なんとも後味の悪い結末だったので、これは良かったなと思う。しかし以前の生死不明という残酷な展開も、個人の思いなど平気で踏みにじる大国の理不尽さを見せるという、この作品のテーマを表していたのかもしれない。見せ方が下手すぎるけど。
とにかく考えに考えてこの「アナトリー“人でなし説“」でようやく自分を納得させていた。そしてこれまで触れた公演では、やはり2008年のイギリスでのコンサート・バージョンが一番いいと思った。しつこいけどアービターだけは田代万里生くんでお願いします。初めてみたアービターが彼だったせいもあるけど、彼の「ゲームはそれ自体がプレイヤーより優先される」という台詞が頭から離れない。
今回のBWミュージカル版は楽曲の順番を変え、削った曲、追加された曲もあるという。CDを比べたら確かに曲が減っている。2008年版より全体で10曲も減っている。そして新しくスベトラーナの曲が増えた。その代わり彼女が歌っていた「SOMEONE ELSE’S STORY」がフローレンスが歌っている。あの曲の方が良かったのに。あと「EMBASSY LAMENT」がなくなっている。それなのに「MERANO」は残ってる、少し短くなってるけど。全体にテンポは2008年よりゆっくりに感じるが、曲数が少ないので全部聞いても20分近く短くなっている。最初は戸惑ったけど聞いているうちに気にならなくなった。みんな上手いので楽曲の素晴らしさを堪能できる。これからしばらくはこれを聴いて楽しもうと思う。
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