『迷い沼の娘たち』 | 日々の雑記
『迷い沼の娘たち』

『迷い沼の娘たち』

ルーシー・ストレンジ著 中野怜奈訳 佐竹美保絵 静山社

舞台である“沼のはざまの村”では本が禁じられている。文字を読んでいるのが見つかると魔女として処罰され、村が不作の時には責任をとらされ火あぶりにされることもある。人は何か悪いことが起こると自分ではなく誰かのせいにしたがる。そのときに魔女というのはなんとも都合のいい存在なのだ。
そんな村に住むウィラたち6人姉妹は、父親には内緒で祖母に字を学び本が読める。亡くなった母親は自分で物語も書いていた。
これはファンタジーの形をしているが、実に現在の世相そのままの世界。その器でもないのに賞賛を浴びたくて男らしさを誇示し、娘たちを抑圧し支配しようとする父親。家父長制の権化のような粗暴な村の男、理不尽なことにははっきり反対する祖母を敵視し魔女とみなす村人。そんな社会と戦った一家の物語。

「わたしはわたし自身のもの。ほかのだれのものにもならない!」
この言葉に拍手をおくりたい。

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