『行く手、はるかなれどーグスタフ・ヴァーサ物語ー』
『行く手、はるかなれどーグスタフ・ヴァーサ物語ー』菱木晃子作 徳間書店2024年
表紙に惹かれて手に取った。作者の菱木さんは翻訳者として知っていたけど、本も書いていたなんてと驚いた。えっとスウェーデンの話?何となく英米児童書かと思ってたけど、そういえばウルフ・スタルク、リンドグレーンなどの本で名前を知ったんだった。
主人公グスタフは「スウェーデン建国の父」としてスウェーデン国内では知らぬ人はいない、いわば英雄らしいけど、わたしはまったく知らなかった。わたしの世界史の知識が偏っているせいだけど。いまだに北欧3国の位置関係もあやふやだし、デンマークはどこだっけ?という有様で、地図で確認した。
16世紀初めデンマークの圧政に苦しむスウエーデンの独立のために立ちあがり、たった1人で味方を募るため困難な旅を続け、ようやく人々の賛同を得て希望を見出す話。道々で裏切りもあれば、手助けもある。地位のあるものが裏切り、名もない庶民が暖かい手を差し伸べる。
歴史上結果はわかっていても、行けども行けども仲間を得られないかなり辛い展開なので、終盤でようやく一緒に闘う仲間を得ることができた時はほっとした。
そしてこの希望を見出したところで終わったのもいいのだろう。あとがきによると、グスタフの評価は「偉大な建国の父」と「冷酷な独裁者」とに分かれるという。どんな理想を持っていても、長く君臨すると腐敗するのも世のならい。本編だけだと立志伝で終わってしまうところを、あとがきにきちんと後の出来事、評価を書いてくれた作者に感謝する。
500年たっても世界のどこかで戦闘のない日はない。世界に真の平和が訪れますように。
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