映画「長安のライチ」

映画「長安のライチ」

映画「長安のライチ」
ダーポン(大鵬)/監督・脚本・主演 2025年 中国

4/3 OttOにて鑑賞

わくわく胸熱な前半と打って変わって、非情な展開になる後半が辛すぎた。皇帝も宰相も宦官も官僚たちも、お前たちみんなみんな滅んでしまえ!と叫びたくなる。

唐の時代の中国、「南方の嶺南の生のライチを長安に届ける」という無理難題を押し付けられた下級役人の李善徳。ただでさえ痛みやすい生のライチを、何千キロの道のりを新鮮なまま運ばなくてはならない、到底不可能な任務。善徳はていのいい生贄に選ばれたのだ。
名もない力もない者が、誠実さと熱意と知恵を持って、その人柄で惹きつけた仲間たちと力を合わせて難題を克服していく。運ぶ時間の短縮とライチの鮮度を保つ方法が、試行錯誤しながら次第に形になっていく様子には胸が熱くなる。このまま成功してお偉方の鼻をあかしてやれ!と思ったら…。

懸命な努力で何とかあと少しというところまでこぎつけたのに、官の介入で様相が一変する。民間ではこれが限度なので朝廷の力を借りようとした善徳を責めることはできない。
それまでハナもひっかけなかったのに、上手くいきそうになると途端に介入してきて手柄を横取りする。いつの世でも上層部のやりそうなことだ。
辛い展開の後半で唯一良かったのは、迎えの船がきたこと。蘇諒、いい奴だな。最初胡散臭いと思ってて悪かったよ。

ただ一つ残ったライチの壺を抱えて、夜の長安を駆け抜ける善徳の姿には涙が出る。そして善徳からこぼれ落ちる木綿花の赤い花びら。それは妻に約束した約束の花であるが、それよりもこの任務を果たすために散っていった数多の人々の血のように感じられた。彼らは命令に従い、善徳を信じて最後までついて来てくれたのに。

何のための任務か、何のための邪魔だてか。すべて宮廷の権力闘争のせい。そんなもののために命をかけたのか、と虚しくなる。だから善徳が思いのたけを宰相にぶつけたのは気持ちよかった。言ったれ言ったれ!

善徳が嶺南に追放され、家族でライチを植えるラストシーンは美しい。できればあの墓標には全員の名前を書いて欲しかったけど。

エンドロールのバックの絵巻物がとてもよかった。

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