『氷石 こおりいし』 | 日々の雑記
『氷石 こおりいし』

『氷石 こおりいし』

『氷石(こおりいし)』久保田香里・作 飯野和好・画 くもん出版 2008年
『駅鈴ーはゆまのすずー』を読んでこの作者の作品をもっと読みたいと思い、同時代を描いたこの作品を読んだ。
天平9年(737年)痘瘡(もがさー天然痘)の流行で平城京は悲惨なありさまだった。その都の市で小石を売って日銭を稼ぐ少年千広。遣唐使船で唐に渡った父を待つ間に母は痘瘡で死に、薄情な伯父には頼れず、優しいいとこ八尋にも背を向けただ1人生きていこうとしている。世を拗ねて人の好意にも素直になれない千広。しかしあるお屋敷きの下女宿奈(すくな)や施薬院の法師伊真(いしん)との出会いが、彼の運命を変えていく。
母親の死の悲しみから、それを約束の1年で帰らず唐に残った父親のせいにしてしまうのは無理のないこと。世話になる伯父の仕打ちに我慢できないのも仕方ない。まだまだ子どもなのだ。それが歴史上の人物も含めてさまざまな人との出会いや別れを通じて、もがきながらだんだん自分の本当にやりたかったこと(父のように学問がしたい!)を見出していく。最初は危なっかしい千広が成長していくさまが頼もしく嬉しい。千広の将来が楽しみだ。

今回も藤原八束が登場する。名前だけだが八束の叔父麻呂も。そして光明皇后。
遣唐使の話もあり、長岡さんの『初月の歌』の時代と重なっておもしろい。『駅鈴』は天平11年(739年)から天平17年(745年)のことだから、この『氷石』の方が時代が近い。

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