日々の雑記
進撃の巨人 22巻

進撃の巨人 22巻

諫山創/著 講談社 2017年4月刊
ようやくエレンの父の日記とエレンの記憶が繋がり、この世界の姿が明らかになる。そして彼らがあれほど憧れた海が目の前にある。でも絶望は続く、終わらない。なんというか、とりあえず「第1部完」でいいのだろうか。
少年の名はジルベール

少年の名はジルベール

竹宮恵子/著 小学館2016年刊
「風と木の詩」執筆の舞台裏、当時の少女漫画界の状況を、著者自身の言葉で読めて興味深い。読者のわたしにとっては著者もすごい才能の持ち主なのに、その彼女をして側にいることが苦しくなってしまう存在。萩尾望都という天才の凄まじさ。創作者の業の深さを感じる。
7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT

7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT

ハロルド作石/著 講談社2017年4月刊
以前小学館から第1部全6巻が刊行されていて、続きを楽しみにしていた。約5年経って出版社を変えて待望の第2部の刊行。これは嬉しい。以前と違うのが副タイトル「NON SANZ DROICT」がついたこと。これはシェイクスピアの紋章に書かれている銘文で「権利なからざるべし」(古フランス語 英語ではnot without right)という意味らしい。
内容は第6巻の続きで、いよいよロンドンに出てきたシェイクスピア一行の話。この巻でタイトルの「7人」が全員揃う!でもトマス・ソープが7人の中に含まれるということが驚き。そして第1部第1巻第1話ですでに(ワースを除く)7人全員が登場していたことにも驚く。あの時ワースが居なかったということは…と不吉な予想をしてしまう。
でも作品が出来上がっていく過程が描かれていてとてもおもしろい。次巻が楽しみ。
狩人の悪夢

狩人の悪夢

有栖川有栖/著 角川書店2017年刊
綾辻行人もそうだけど、途切れず新作を発表し続けて、しかも一定の水準を保っているってすごいなあ。特にこれはシリーズものなので、お約束の安定感がある。しかし有栖川作品でスマホが出てくるなんて隔世の感あり。
いつもきっちり地道に論理を組み立てたミステリで、この人本当に誠実に本格推理に取り組んでいるんだなあと頭が下がる。事件の真相はこれまた切ない。
須賀しのぶ

須賀しのぶ

どちらも集英社オレンジ文庫
『雲は湧き、光あふれて』2015年
『エースナンバー』2016年

野球が大好きな著者の高校野球の話。3編ずつ収録。『雲は湧き、光あふれて』に収録されている同名の作品だけ戦前から戦後が舞台で、あとは現代が舞台の連作。時代は違っても球児たちの思いは同じ。それだけに戦争に翻弄された彼らが切ない。思いきり野球をさせてあげたかった。
タイトルは夏の甲子園大会の大会歌「栄冠は君に輝く」の歌詞の最初の部分から。何度も聴いていたのに、ラストの「あゝ栄冠は君に輝く」しか記憶にない。こんな歌詞だったのか。
半身

半身

サラ・ウォーターズ/著 中村有希/訳
創元推理文庫 2003年刊

「茨の城」がおもしろかったのでこれも読んでみた。
ミステリかと思っていたらオカルトっぽかったり、ゴシックロマン調だったり、「茨の城」でもちょっと感じた百合っぽかったり、ジャンル分けが難しい。半分くらいは予想ついたけど、やはりラストの展開は驚いた。ああそういえばあれも伏線かと思うところ多く、もう一度読み返したくなる。たいへんおもしろく読んだ。
しかし読後に爽快感はあまりなく、ヒロインが気の毒でならない。彼女自身の問題もあるが、やはりあの時代の社会が求める(押しつける)女性像の犠牲者に思える。当時(19世紀)女性は男性や家の従属物でしかなく、そこから脱する手段はほとんどない。自立するなんて貴婦人のすることではなく、それをはかろうとする女性は家族からも世間からも変わり者として白い目で見られる。(母親に「恥」とまで言われる) それをはねのけ自立を勝ち取るために、孤独に耐え戦い抜く強さはヒロインにはなかった。不安定で危なっかしくて、でもプライドは高くて、といろいろ痛い彼女だが、自分にも覚えのあることなので嫌いにはなれない。普通の女性にはそれほどの才能も強さもないのだから。
同じような時代と女性を描いた映画「ミス・ポター」や「ある貴婦人の肖像」それと観ていないけど「未来を花束にして」を思い出した。今の時代に生まれて良かったとしみじみ思う。
逃げるは恥だが役に立つ 第9巻(最終巻)

逃げるは恥だが役に立つ 第9巻(最終巻)

海野つなみ著 講談社 2017/3刊

娘が8巻までは電子書籍で買っていて、最終巻だけはコミックスで買った。
評判になったドラマも観たことなく「恋ダンス」なるものも知らなかったが、作品は続きを楽しみにしていた。前巻で気になっていたので、今回本編でも番外編でも百合ちゃんのエピソードが主でよかった。表紙も百合ちゃん。
百合ちゃんがポジティブモンスター五十嵐安奈に言った言葉が胸に響く。

「あなたが価値がないと思っているのは この先自分が向かっていく未来」
「あなたにとっての未来は 誰かの現在であったり過去だったりする」

これは昔聞いた
「子供叱るな来た道じゃ 年寄り笑うな行く道じゃ」
に通じる言葉だなあ。肝に銘じて生きていこう。
コマドリとミソサザイ

コマドリとミソサザイ

「だれがコマドリを殺したのか?」では、ダイアナのあだ名がコマドリで姉のマイラがミソサザイ。コマドリはかわいいけどミソサザイって?とちょっと驚く。こんなあだ名つけるか?と思ったけど、これは日本語だからそう感じるだけで、英語だとRobinとWrenなので別に変じゃない。コマドリもミソサザイもイギリスでは人気のある小鳥ということなので「愛するかわいい子」という思いでそう呼びたくなる気持ちは分かる。「小鳥ちゃん」とか「子猫ちゃん」という感じなのだろう。ただ訳文で「コマドリ」とか「ミソサザイ」と呼ばれてるので、どうもしっくりこない。ダイアナが自分のことを恋する相手に「コマドリと呼んで」と言ってるけど、これがマイラだったら「ミソサザイと呼んで」になり、ものすごく間抜けに聞こえる。ちっともロマンチックじゃない。だから訳文でも「ロビン」「レン」でいいんじゃないかな。

昔話や童謡ではコマドリとミソサザイは対で語られることが多いらしく、姉妹にこのあだ名をつけたのもイギリス人には納得できることなのだろう。雄のコマドリと雌のミソサザイが結婚する話もあるらしい。(「Cock Robin and Jenny Wren」)またジェニー・レンという名は小鳥のようにかわいい少女というイメージがあるそう。たしかにミソサザイよりうんとかわいいひびきだ。やっぱり訳文でもこちらを使った方がいいと思う。

それでも、マザーグースの歌詞で殺されるイメージのあるコマドリをあだ名にするのに、抵抗はないのかなあという疑問が残る。
だれがダイアナ殺したの?

だれがダイアナ殺したの?

ハリントン・ヘクスト著 鈴木景子訳
論創社 2015年7月刊

こちらも表題紙裏に原題あり
Who Killed Diana? 1924
by Harrington Hext

創元版でお腹いっぱいという感じだったので、こちらはざっと読んで翻訳の違いを見るだけでいいかなと思っていた。ところがパラパラめくってるとけっこう違う表現が目につく。言葉の違いとか文章の順番の違いとか直訳と意訳とかではなく、違うテキストから訳したのかと思うほど。(確かにイギリス版とアメリカ版という違いはあるが)それでいながら内容は違わない。同じことを違う表現で描いているみたい。
一番驚いたのは、終盤での重要な言葉。

創元文庫P292「そんなにしょっちゅう自分を甘やかしてどうするんだ」
論創社P262「君はいつか自分の首を絞めることになるぞ」

原文でどう書いてあるのか本気で知りたい。

結局読み比べることはやめて、そのまま読み進めた。最初の違和感は薄れこの翻訳に慣れてきた。文庫とハードカバーという違いもあると思うが、こちらの方が丁寧な感じ。どちらで読んでもいいけど、こちらの方がよりイギリスの雰囲気があるように思う。
だれがコマドリを殺したのか?

だれがコマドリを殺したのか?

イーデン・フィルポッツ著 武藤崇恵 訳
創元推理文庫 2015年3月刊

表題紙裏に原題と著者名あり(イギリス版も併記)
WHO KILLED COCK RIBIN?
(WHO KILLED DIANA?)
by
Eden Phillpotts (Harrington Hext)
1924

これはアメリカ版からの翻訳。
とりあえずこちらから読んでみた。タイトルから童謡の見立て殺人のミステリだと思っていた。だが童謡には関係なく、単にコマドリというあだ名の女性の死になぞらえてタイトルがつけられたようだ。最初のイギリス版では「コマドリ」ではなく「ダイアナ」だし。
心理描写や風景描写が細かく、推理小説というより(サスペンス風味のある)普通小説、恋愛小説のようだった。古きよき時代のイギリスを描いたドラマを観てる感じがしておもしろかった。
コマドリというから可憐な女性を想像していたが、けっこう強い女性で予想を裏切られた。タイトルから悲劇がおきるのはわかっているが、作者の思わせぶりというか、フィギュアスケート並みの煽りが多くて少し疲れる。もう少しそれが少ない方が効果的だと思う。
メインのトリックは一応伏線はあるけど今では絶対無理だし、当時でも強引なのでは?最後に告白書があるのは同じ作者の「赤毛のレドメイン家」と同じで既視感いっぱい。アガサ・クリスティの普通小説に似た感じだけど、男性と女性の違いなのかもしれないが、クリスティの方が上手いと思う。
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