沈黙の書

沈黙の書

乾石智子 / 著 東京創元社 2014年刊

オーリエラントシリーズ新刊。いつもながら素敵な装丁にうっとりする。新刊ながら扱っている時代は1番古く、オーリエラントのなりたちの話。ああ、これが後にああなるのか、とこれまでのシリーズに思いを馳せた。
闇を完全に葬るのではなく(もともとそれは無理)しばらく封じておく。そこが単純な勧善懲悪、善悪二元論とは違ってとてもいい。なんだか「イティハーサ」(水樹和歌子)を思い出した。また読みたくなったなあ。
War Horse  戦火の馬

War Horse 戦火の馬

8/9 東急シアターオーブにて鑑賞。

馬!馬!馬!素晴らしい!冒頭から馬の動きに感動しっぱなし。戦闘場面の演出も見事で、舞台だからこそ出来るんだなと感心した。トップソーンが崩れ落ちる場面ではもう涙が…。馬を動かしていた中の人たちが外に出ていき、ああ後に残ったものは亡骸なんだと、ものすごくそれが実感できて、それがもう…。
開幕前から舞台の上方に雲のような白い布が浮かんでいて、そこに色々背景が映るのだけど、後で感想を検索していたら、あれはニコルズ中尉のスケッチブックだ、と書いている人がいて、ああなるほど!と思った。そう、たしかに最初は馬や田舎の風景など、スケッチっぽい映像が映ってた。こういう演出も凄いなあ。
意外と歌の場面があって、映画ならバックミュージックとして流れるだろうに、普通に登場人物の中に混ざってアコーディオンの人と歌う人が一人ずつ現れる。素朴な民謡風なこの歌がまた素敵だった。彼らの故郷をより強く感じさせる。戦場になど行きたくなかった彼ら、どんなに帰りたいと願っていただろうに、ついに帰れなかった彼らの故郷を。
カーテンコールでは思いっきり拍手した。ちらほら立っている人がいたので、心おきなくわたしも立った。
アイアンナイト 全3巻

アイアンナイト 全3巻

屋宜知宏 / 著 集英社

週刊少年ジャンプ連載時、おもしろく読んでいたのだが、どうも人気なさそうで打ち切りかな?と思っていた。でも盛り返してさあここから新しい戦いが、と思ったところで、突然の終了。うーん、やっぱり打ち切りはまぬがれなかったか。しかしここで終わるの?でも3巻に最終話が書き下ろされていて、きちんと終了できてよかった。そしてこの話がとてもよかった。そうか、1巻の冒頭の言葉はユキちゃんの言葉だったのか。なんか涙でた。残酷で絶望感あふれた作風は、少年誌ではちょっと無理だったか。でもいい作品だったと思う。好きな人はけっこういたはず。
昭和元禄 落語心中  6巻

昭和元禄 落語心中 6巻

雲田はるこ / 著 講談社

小夏の子の父親がわかる。センセイじゃないけど、ほんものの迫力、こわいよ〜。ヨタはいい子だな。頑張れ。八雲の体調が気になる。
複製された男

複製された男

8/5 新宿シネマカリテにて鑑賞。

わ、わからない…。ネットで飛び交う感想に激しく同意。寝不足もあり、ところどころ意識が飛んでたけど、それがなくてもたぶん頭抱えただろう。わかんないよう。
公式サイトの監督のコメントを読んで、ようやくどういう話なのかわかったけど、えっ、そんな身も蓋もない話だったの?
映像と音楽がずっと緊張を強いて、疲れたのなんのって。決してつまらないとか観なきゃよかったとは思わないけど、もう一度観る気力はない。
ビーバー族のしるし

ビーバー族のしるし

エリザベス・ジョージ・スピア / 著 こだまともこ / 訳
あすなろ書房 2009年刊


1986年に犬飼千澄/訳でぬぷん児童図書出版から刊行されていた。以前のは読んでいないが、こちらは2010年中学生の読書感想文課題図書になった。
1768年の話だから、アメリカはまだ独立していなくて、インディアン(現在はその呼称は使われてないが、当時はこう呼んでいたので本書でもあえてそれを使っている)たちは白人たちに土地を奪われ住む所を追われていった時代。1人で森の中で暮らしながら家族を待つ13歳のマット少年と、インディアンの少年エイティアンの友情物語。最初はあまりにも違う文化、世界観を持つ二人は容易にはうちとけない。それがだんだん歩みよってくるところ、でもやはりどうしても相容れないものがあるところがていねいに描かれている。
ひとりで頑張ったマットも偉いけれど、やはりエイティアンたちの今後のことを考えると胸が痛い。とても読みやすいけれど、内容は深く重い。読書感想文自体はあまり好きなことではないが、課題図書に選ばれたことで多くの人に読んでもらえるなら、いいことだと思う。
パークランド  ケネディ暗殺、真実の4日間

パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間

8/3 ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞。

「ユナイテッド93」のようなドキュメンタリー調で、同じようにとてもよかった。真実といっても新しい発見があるわけではない。あの場に居合わせた関係者それぞれの真実の物語。
パークランドとはケネディ大統領が狙撃後搬送された病院の名前。何となくあの狙撃場面で暗殺が完了していたような気になっていたが、当然すぐ病院に運ぶわけで、そこで懸命の治療が行なわれたはずである。映画はたんたんと事実を時間にそって追っていく。驚いたのはケネディを搬送するとともに次期大統領のジョンソンをすぐに警護したこと。そうかそれが当然の仕事なんだな。それぞれの人か自分の職務に全力で取り組む姿はとても感動的。さらに驚いたのは、後日暗殺犯のオズワルドが狙撃後搬送されたのも同じパークランド病院だったこと。しかも治療担当スタッフも同じ顔ぶれだったのには、思わず身震いがした。そしてケネディの葬儀と同じ日に、オズワルドもまたひっそりと埋葬されていたこと。何ということか。この映画はわたしにとっては、知らなかった真実をいくつも教えてくれた。
登場人物は最初にテロップが出るのだか、その時点ではまだ誰が誰だかわからない。だからもう一度見て彼らの動きを最初から見つめてみたい。
この出来事で多くの人の人生が変わってしまったのだか、それぞれを演じた俳優が皆よかった。
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

8/2 TOHOシネマズシャンテにて鑑賞。
最初はどうもストーリーが雑なようなスッキリしない気持ちがして居心地が悪かったのだけど、パガニーニを演じる デイヴィッド・ギャレットの超絶技巧演奏を聴いているうちに、そんなことはどうでもよくなってきた。とにかくこの音楽を聴けたのは幸せだった。編曲もあるのだろうが、クラシックなのに全然眠くならなかった。劇中歌われるアリア「あなたを想っているわ、愛しいひとよ」がとても美しい曲で涙が出そうになった。
シャーロットの名前を聞いたパガニーニが「ではカルロッタだな」と言ったので、なるほどシャーロットはイタリア語だとカルロッタになるのか、と驚いた。「オペラ座の怪人」を思い出した。
原題は「悪魔のヴァイオリニスト」このままでもよかったのに。
青銅の弓

青銅の弓

E.G.スピア / 著 渡辺茂男 / 訳
岩波書店 1974年刊

これはまた難しいテーマだ。ローマに支配されていたユダヤ人たちが、いつかローマ兵を追い払い自分たちの故郷を取り戻そうとする思い。その思いの強さが、今も続く争いの根源であり、若い主人公がかたくなに、その思いを募らせるのも無理はない。そこへ現れたイエス。復讐ではなく愛を説くイエスに失望しながらもなぜか惹かれたのは、彼の心が安らぎを求めていたからか。主人公は愛に目覚めたが、この後のイエスの運命を知っている私たち読者は、やりきれない思いを抱く。
パレスチナが今もなお紛争の地であることに、問題の根深さを思い知る。